能登半島地震から8か月、揚浜塩の復興と500年続く塩づくりに迫る
2024年9月8日に放送されたNHK総合の『うまいッ!』では、石川県の能登半島で続く伝統的な製塩方法「揚浜塩」にスポットを当て、その500年にわたる歴史と、2024年に起きた能登半島地震からの復興に取り組む人々の姿を追いました。
揚浜塩は、能登半島特有の製塩法であり、粘土地に砂を敷いて作られる塩田で海水を乾燥させるという独特の方法です。塩はただの調味料としてだけでなく、能登の文化そのものを象徴する存在。塩づくりの現場は震災に大きな打撃を受けましたが、地域の復興とともに再び生産が再開され、道の駅での販売やクラウドファンディングで支援を集めるなど、地域全体がこの伝統を守り続けようとしています。
【うまいッ!】能登半島地震から8か月—伝統の調味料「いしり」を守る挑戦とその未来
500年以上続く能登の揚浜塩、伝統的な製塩方法とは?
揚浜塩は、石川県の能登半島で500年以上にわたり作られてきた、日本で唯一の伝統的な製塩法です。この揚浜式製塩は、非常に手間のかかる工程を経て作られ、地域の自然環境と密接に結びついています。日本で唯一残る揚浜式製塩が行われているのは、能登半島の珠洲市。ここでは現在、8つの製塩会社がその伝統を受け継ぎ、塩づくりに励んでいます。
揚浜式製塩の工程:
- 塩田に海水を撒く: 粘土地の上に砂を敷き、塩田に海水を撒きます。海水が自然に乾燥することで、砂に塩分が付着します。
- 濃縮塩水を作る: 砂に付着した塩分に再び海水をかけることで、より濃縮された塩水を作り出します。
- 釜焚き: 濃縮塩水を釜に入れ、まずは6時間かけて荒焚きし、塩分濃度を高めます。その後、さらに14時間の本焚きで塩を煮詰め、塩の結晶を作ります。この工程で、独特の舌触りと風味が引き出される揚浜塩が完成します。
この製塩法で作られた塩は、細かい層状構造を持ち、舌の上で複雑に溶けるのが特徴です。これにより、通常の塩よりも深い味わいが生まれ、料理に使うと、食材の旨味を最大限に引き出してくれます。
地震による被害からの再出発、揚浜塩の復興の現状
2024年の能登半島地震では、珠洲市の揚浜式製塩業者にも多大な被害が出ました。塩田や釜が壊れ、道路は通行止め、水道の復旧も見通しが立たない状況でした。しかし、地震発生から4か月後、地元の職人たちは再び塩づくりを再開しました。揚浜塩の生産が再び軌道に乗るまでには、多くの苦労がありましたが、地域の人々の支えと、全国からの応援が彼らを後押ししました。
特に注目すべきは、道の駅で行われたクラウドファンディングです。この取り組みには、能登の揚浜塩を守りたいという想いが多くの人々に届き、目標額の倍近い支援金が集まりました。この支援により、製塩業者たちは設備の修繕や生産の再開に必要な資金を確保し、揚浜塩の伝統を未来に繋げるための大きな一歩を踏み出すことができました。
揚浜塩を使った料理、道の駅の絶品「塩むすび」
揚浜塩は、珠洲市の道の駅でも販売されており、特におすすめされているのが「塩むすび」です。この塩むすびは、揚浜塩の風味が米の甘みを引き立て、シンプルながらも深い味わいが楽しめる一品。揚浜塩が持つ複雑な風味が、米の一粒一粒にしっかりと絡み、口の中でじんわりと広がる感覚は、他では味わえない特別な体験です。
道の駅を訪れたら、ぜひこの「塩むすび」を試してみてください。揚浜塩の魅力を存分に感じられる一品で、能登の自然と職人技の結晶を味わうことができます。
能登の揚浜塩とフレンチの融合、シェフたちが創る新たな料理
揚浜塩は伝統的な日本料理に限らず、現代の料理シーンでも幅広く活用されています。番組では、金沢市にあるフレンチレストランのシェフ・西山さんが、揚浜塩を使った創作料理を紹介しました。彼は、能登の食材にこだわり、揚浜塩を使ったフレンチ料理を提供してきたシェフの一人です。
彼が創作したのは、揚浜塩を使った「塩カヌレ」と「塩グミ」。塩カヌレは、揚浜塩の塩味がデザートの甘さを引き立て、フランスの伝統菓子カヌレに新しい風味を加えたものです。一方、塩グミは、独特の舌触りと甘じょっぱい味わいが特徴で、揚浜塩の風味を活かしたユニークな一品となっています。
これらの料理は、揚浜塩の新たな可能性を示すものであり、震災からの復興を象徴するメニューとしても注目されています。
復興への願いを込めたフレンチの創作料理
金沢市のフレンチレストランで提供される「塩カヌレ」と「塩グミ」は、揚浜塩の風味を活かしたデザートとして話題を集めています。スタジオでも実際にこの料理が紹介され、出演者が味わう様子が放送されました。揚浜塩の複雑な味わいが、デザートの甘さと絶妙に調和しており、その美味しさに驚く出演者の姿が印象的でした。
これらの料理には、震災からの復興に向けた強い願いが込められており、揚浜塩を使った料理が今後どのように発展していくのか、ますます注目されています。
能登の揚浜塩が生み出す未来、地域の誇りを守り続ける
能登半島で500年の歴史を持つ揚浜塩は、ただの調味料ではなく、地域の誇りや文化そのものです。震災という大きな試練に直面しながらも、職人たちはその伝統を守り続け、塩づくりを再開しました。地域の人々の支えや全国からの応援が、この伝統を未来へと繋ぐ力となっています。
また、フレンチシェフたちが揚浜塩を使って新しい料理を生み出すことで、能登の食文化はますます多様化し、進化を遂げています。伝統と現代の融合が生み出す新たな可能性は、今後も多くの人々を魅了し続けるでしょう。
まとめ:能登半島の揚浜塩、伝統と革新の両輪で未来へ
能登半島の揚浜塩は、500年もの間、地域の自然と共に育まれてきた伝統的な製塩法です。震災を乗り越え、地域の職人たちはその伝統を守り続けています。また、フレンチシェフたちの創意工夫によって、揚浜塩の新しい可能性が広がり、食の世界に新たな風を吹き込んでいます。
能登を訪れた際には、この伝統の塩と、それを活かした美味しい料理をぜひ体験してみてください。地域の復興とともに歩む揚浜塩の魅力は、今後も多くの人々に伝わり続けていくことでしょう。
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