2024年8月31日に放送された「所さん!事件ですよ」では、”睡眠”をテーマに日本の睡眠不足問題の現状と、その解決策の最前線を取り上げました。日本はOECD加盟国の中で睡眠時間が最も短い国とされ、慢性的な睡眠不足が国民生活に大きな影響を及ぼしています。番組では、理化学研究所や筑波大学で進められている人工冬眠の研究や、企業の睡眠改善プログラム、さらには新たな試みである”スリープツーリズム”まで、睡眠に関する最新の取り組みを紹介しました。出演者の木村佳乃さん、所ジョージさん、ホルコムジャック和馬さんが、未来の睡眠の在り方について考えを深めます。
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人工冬眠の可能性を探る:未来を変える新技術
人間が”冬眠”する時代は来るのか?
まず番組で注目されたのは、理化学研究所で進められている人工冬眠の研究です。2020年に、マウスの体温を人工的に低下させることでエネルギー消費を抑え、冬眠状態にする方法が発見されました。この画期的な研究に取り組むのは、筑波大学の櫻井武さんと理化学研究所の砂川玄志郎さんです。櫻井さんは、マウスの脳にある「Qニューロン」という神経群に着目し、これを刺激することで体温を37度から24度に低下させ、酸素消費量を半分以下に減少させることに成功しました。
砂川さんは、この技術を人間にも応用できれば、救急車での搬送中に冬眠状態にすることで、病気の進行を遅らせ、救える命が増える可能性があると考えています。さらに、NASAやJAXA(宇宙航空研究開発機構)もこの技術に注目しており、宇宙飛行士の長期間の宇宙滞在や、深宇宙探査の際の冬眠技術としての応用が期待されています。この技術が実用化されれば、医療や宇宙探査の分野での革命的な進展が期待できるでしょう。
動物と人間の眠りの違い
続いて、番組では動物の眠りと人間の睡眠の違いについても解説されました。人工冬眠から覚めたマウスは完全に健康な状態で、自然界の冬眠動物であるシマリスも冬眠した方が寿命が延びることがわかっています。シマリスの冬眠中は、まるで時間が止まっているかのような状態で、目覚めたときには若干若返っているという現象も報告されています。
一方で、人間の睡眠は冬眠とは異なり、睡眠中も脳は「オフラインのメンテナンス状態」にあり、完全には休んでいないとされています。また、イルカや鯨は左右の脳を別々に眠らせることができる「半球睡眠」というユニークな睡眠スタイルを持っており、人間の眠りとは根本的に異なることが強調されました。
日本の睡眠不足問題とその影響
睡眠不足大国ニッポンの現状
日本は、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で最も睡眠時間が短い国とされています。働く人々の70%以上が睡眠に不満を持ち、その半数近くが6時間未満の睡眠しか取れていないという統計が示されています。これにより、睡眠不足はパフォーマンスの低下を招き、年間で20兆円以上の経済損失が発生しているとされています。
番組では、特に日本人に特有の睡眠文化についても触れられました。例えば、夜の睡眠が十分であれば、日中に眠くなることはないとされていますが、実際には多くの日本人が日中に眠気を感じる状況にあります。このような睡眠不足の状態は、社会全体の生産性にも悪影響を与えており、睡眠の質を向上させることが求められています。
企業の取り組みと”睡眠の見える化”
東京メトロの革新的な睡眠改善プログラム
番組では、睡眠不足に悩む日本企業の取り組みとして、東京メトロの例が紹介されました。東京メトロでは、社員の睡眠の質を向上させるために、工務区の社員に対してスマートウォッチを配布し、睡眠の質を「見える化」する取り組みを行っています。スマートウォッチで収集された睡眠データは、専門家によって分析され、個人に適した睡眠改善法が提案されます。このプログラムに参加することで、社員はより質の高い睡眠を得られるようになり、仕事のパフォーマンスも向上しているとのことです。
これまでに150社以上、3万人以上の社員がこのプログラムを利用しており、企業全体での睡眠の質の向上に貢献しています。特に、泊まり勤務や日勤が交互にあるため、睡眠時間が不規則になりがちな工務区の社員にとっては、大きな改善効果が期待されています。
仮眠の新しい形:立ったまま寝る「仮眠ボックス」
仮眠の効果を最大限に引き出す新しいアプローチ
北海道旭川市の建設会社では、社員のリフレッシュとパフォーマンス向上のため、立ったまま寝ることができる仮眠ボックスを導入しています。このボックスは、立った状態で仮眠を取ることができるように設計されており、横になって寝るよりも短時間で効果的な仮眠が取れるとされています。10~20分の仮眠が最も効果的で、垂直状態で寝ることで深い睡眠に入ることなく、素早くリフレッシュできるという実証結果もあります。
社員からも「腰痛が楽になった」「横になるよりも効率的に仮眠を取れる」といった声が上がっており、労働環境の改善にも寄与していることがわかります。この新しい仮眠の形は、今後も注目を集めることでしょう。
スリープツーリズム:睡眠をテーマにした新しい旅行の形
睡眠を追求する新たな観光:スリープツーリズムとは?
最後に紹介されたのは、「スリープツーリズム」という新しい形の観光です。これは、睡眠を改善しようとする人々を対象にした特別な旅行プログラムで、香川県の高松市や東かがわ市で開催されています。番組では、武田雛歩さんがこのツアーに参加し、そのユニークな体験をレポートしました。
ツアーでは、日中に新しい体験を通じて脳を覚醒させ、夜にはリラックスできる環境を整えることで、質の高い睡眠を促進します。例えば、日中には魚の餌やりや釣りを楽しみ、夜には生演奏を聞きながら眠りに落ちるといった活動が行われます。また、亜鉛を多く含む牡蠣を食べることで、睡眠効率と入眠を改善する効果も期待されています。宿泊施設には、眠るためのグッズが10点以上用意され、夜にはセラピストによるハンドマッサージも受けられます。翌朝は、自分で朝食を作り、太陽の光を浴びながら体を動かし、再び夜の睡眠に備えるという、非常に計画的な睡眠改善プログラムが組まれています。
武田さんは、「翌日、すぐに起きられて二度寝もなかった」と語り、ツアーの効果を実感していました。現在では、ぐっすり眠れなかった場合に宿泊費を返金するホテルも登場しており、睡眠を重視した新しい観光の形が広がりつつあります。
まとめ
今回の「所さん!事件ですよ」では、睡眠不足が深刻な問題となっている日本の現状と、それを解消するための最新の取り組みが紹介されました。理化学研究所と筑波大学による人工冬眠技術の研究から、企業の睡眠改善プログラム、さらに新しい観光スタイルであるスリープツーリズムまで、さまざまな角度から睡眠の重要性と改善策が示されました。これからの時代、質の高い睡眠を確保することが、個人の健康だけでなく、社会全体の幸福にもつながるということを強く感じさせる内容でした。今後も、睡眠に関する研究や取り組みの進展に注目していきたいですね。次回の「所さん!事件ですよ」も楽しみです!
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